≪健康に良い運動と健康に悪い運動≫

 世の中には運動をして健康になる人と、運動をして健康を阻害する人がいます。しかも、健康に良いとされる運動を続けた結果として、訳の分からない症状で苦しんでいる方も多いのではないかと思われます。ただ、今の症状が過去の運動が原因で、背骨や骨格変異を導き、結果として内臓への器質的変異に繋がっているなどと、考える人は皆無でしょうね。でも、実際のところ、結構ありそうですから「原因不明の問題を抱えている方」には、一考の余地がありませんか?

 私が主宰する主婦の健康教室でのお話です。その中に、どこの病院に行っても「どこにも問題がありません」と言われたのですが、「いろいろと体が苦しい」と訴える人たちがいました。

 もともと体力や筋力の弱い女性は、体質的に日々の生活で「身体の痛みは普通の状態」のように扱われている方が多いですよね。しかし、40歳を過ぎる頃からは強い症状で悩む方も多いですね。

 ある日、体調不良を訴える方々に共通する身体の形状を発見することが出来たのです。なんと背中の腎臓部付近が腫れているではないですか。本人たちは特にその部分に痛みがあるわけではありませんが、明らかに異常に盛り上がっているように見えるのです。そこで彼女たちにある質問をしてみました。

「大人になってから、〇〇を習っていませんでしたか?」と尋ねたところ皆口を揃えたかのように「〇〇を習っていました。しかも、必死でインストラクターの指示に従って頑張っていた」そうです。

 実は、〇〇という運動は、子供の頃から習っている分には問題は少ないと思われますが、大人から始める運動としては、女性にはあまり向かないと私は感じていました。もちろん、遊びの範囲くらいで行う分には良い運動でしょうが、習ってまで真剣に取り組むにはリスクが大きいと考えていたからです。もちろん、そのリスクを排除する方法もあるのですが、その業界の人で理解している方は皆無でしょう。

 問題は、背中の腎臓部が腫れるような状態に、いかなる問題が生まれるかを正確に考える必要がありますね。また、その論理と対応手段も大切ですね。いかなる素晴らしい理論でも、問題に無力であれば「机上の空論」と言いますから、私たちも言いっ放しではいけませんね。

 

≪健康に良い運動や体操の秘密≫

 健康に良い動きか悪い動きかは、一般的に運動や体操の種類に問題の秘密があるのであろうと、考える方が多いのではないでしょうか。実際に多少なりとは影響があることは間違いありませんが、秘密の核心は一般常識の範囲にはございません。では順を追って身体についての考え方の問題から考えて行きましょう。

①力の発生と伝達の問題

 まずは自転車か自動車をイメージします。自転車と自動車の力の発生部分と力の伝達部品についてイメージしてみて下さい。例えば自転車の力の伝達を、大雑把にイメージしますと、ペダルを踏み込むとその力が歯車に伝わり、次にチエーンに伝達されます。チエーンに伝達された力は後ろタイヤのリムに付けられた歯車を動かします。この歯車に伝わった力がリムを伝わり後部タイヤを動かします。後ろタイヤが動くことで自転車の前輪は後輪と同じ回転をします。この自転車で、力の伝達で重要な働きをした歯車やチエーンは、ペダルを漕ぐ作業で生まれた、回転方向の力を、同じ回転方向に力を伝達しただけです。自動車も多少関係部品が増える程度で大幅な違いはありませんから考えてみて下さい。

 今度は人が、歩いたり走ったりする様子をイメージしてみて下さい。足の裏から脛、膝、太もも、お尻でしょうか。いいえ、腕も振っていますから腰、背中、首、腕などでしょうか。自転車や自動車とは、動きがまるで違いますよね。実は足の太ももでもふくらはぎでもありません。私はとても面倒で書ききれません。ここには、私たちの知らない名前の筋肉が多数参加しております。そして筋肉の中には、数えきれないほどのロープが参加しております。このロープたちは名前もつくことも無く、その動きの詳細も知られずに動いています。

 

 ≪誰も知らない、身体の軸の中心部を上げる運動と、下げてしまう運動≫

 身体には見えない力が縦横に行き来しています。その力は身体を動かす度に、とても忙しく動いています。

 身体は地球の引力に自然かつ無意識のうちに、バランスを保とうとする筋肉の働きがあります。この働きは、決して人の注目を浴びることはありませんでした。この現象は、背骨の動きと深い関係があります。特に頸椎の微妙な角度の違いや、胸椎上部の身体の重力方向の軸との変異具合で変わってきます。

 つまり地球の引力に対して人は生活の各場面で常にバランスを取ろうとしてますが、近年の運動不足が定着した生活における筋肉使用環境では、この働きがうまくいかず、各種の問題を引き起こしております。運動には、筋肉間の力の伝達段階で、一見して同じ動きに見える運動でも、実は真逆の働きをしている場合が多いのです。しかし、この考えはまだスタート段階の理論であり、この問題を見破る力は、かなり特殊な能力と言える段階です。

 

つづく